金融広報中央委員会が令和5年「家計の金融行動に関する世論調査」を発表しました。50代の単身世帯における平均貯蓄額は以下のとおり。調査対象は「366世帯」です。
・金融資産非保有:38.3%
・100万円未満:11.2%
・100万~200万円未満:5.2%
・200万~300万円未満:2.7%
・300万~400万円未満:3.6%
・400万~500万円未満:3.8%
・500万~700万円未満:4.6%
・700万~1000万円未満:5.5%
・1000万~1500万円未満:4.9%
・1500万~2000万円未満:4.1%
・2000万~3000万円未満:4.4%
・3000万円以上:9.3%
・無回答:2.5%
いかがでしょうか?あなたはどのあたり?
つまり、非保有を含めて100万円の貯蓄も無い人が49.5%、半分もいるということです。安心しました?
でも、データの恐ろしいところはここから。
では、「50代の単身世帯における平均貯蓄額」として切り出すと幾らになるか。ズバリ1391万円。
おいおい。半分の人が100万円以下なのに、平均貯蓄額とすると1391万円とされてしまうんですね。ちなみに中央値は80万円との事ですので、回答した中に極端に貯蓄額が多い人がいたのでしょう。平均値の算出は「全てのデータを足したあとにデータ数で割った値」ですから、0円と1000万円の平均は500万円になります。
そのため、一般的な貯蓄の実態に近いのは中央値となります。
ですが、この値をどう扱うのか。例えば50代へNISA活用を訴えるならば、中央値である80万円や100万円以下が半分もいるという事を言ってくるわけです。「50代の半分が、未だに金融投資運用を控えており、由々しき問題です。NISA活用に向けたプロモーションに予算を付けてください」となるわけですね。
逆に「50代の半分以上がしっかりと老後将来に向けて考えており、50代の平均貯蓄額は1391万円もあります。まだ退職まで10年以上残っており、充分老後に向けた準備ができていると考えられるので、年金支給は70歳からにしても問題ないでしょう。」とかなっちゃうかもしれません。どちらのデータも正しく、嘘は無いのです。
データをどう切り取り、自分たちの都合が良い判断基準として扱えるのか。そんな狸と狐の化かし合いみたいな事がされているわけです。
あくまでデータは参考までにといえど、ご自身が保有している金融資産が平均値や中央値より少ないと、「将来が不安」と感じる人もいるでしょう。定年までは、また間があります。気が付いた時点から、老後に目を向けて以下の準備をはじめましょう。
【老後の準備】
・生活費がどれくらいなのか調べる
・退職金がどれくらいなのか調べる
・65歳から受取る年金額を調べる
・老後に向けた預貯金を増やす
・年金額内で生活するための家計費の見直し
・老後も長く働けるよう、自分にあった働き方を考える
老後資金が少ない50代にとって老後準備の中で最も大切なのは「長く働き続ける」ための準備です。貯蓄が少ないというのは、今の生活も大変であるという事ですよね。別にいま贅沢している訳じゃなくて、私だって余裕があるなら貯蓄してきたし!という声が多いと思います。
公的年金だけでは家計費に不足が生じることもありますが、その分働いて不足分を補うことができれば自立した生活が送れます。しかし、働くと言っても、高齢になれば体力も気力も衰えてきます。自分の体力、能力、適性にあったもので、より長く働き続けられる仕事を選ぶようにしましょう。